私が高校生の頃の話です。
私の家は、父が帰ってくると、
みんな無口になったり、蜘蛛の子を散らすように自分の部屋に行っていました(^^;;。
大抵大酒飲んで酔っぱらっているし、
なんとなく憂鬱になるから、
部屋に行くか、別の事を始める。
母は父の話を黙って聞いていたけど、
「話聞いているのか!」と何度も言われ、
見るのも聞くのも正直ウンザリ。
この光景は、小さい頃からのお決まり。
誰も父に逆らえず、下手に反抗して逆鱗に触れれば、
もっと大変な事になる。そう思って見て見ぬフリをしていた。
兄の一言
ある日、
いつもの通り、酔って帰って来た父。
家族が顔色を変えるのを、感じ取り、
「なんで、いつもお前達は、そうゆう顔をするんだ!」
「飲んで帰って来るのがそんなに悪いのか!」
と日頃の不満を言い始めた。
あー、また、始まった。
こうなれば、父の怒りが収まるまで聞いているしかない。
そう覚悟した時、
兄が初めて父に楯突いた。
「酔って帰って来て、グダグダお袋をなじるから、みんな嫌なんだよ。
外で飲んで来るなら楽しんで来い! 家にはニコニコして帰って来い!」
私と次兄は固まった!
あーーーーーーーーー、とうとう言っちゃった(◎_◎;)
父は、きっと怒りだす!
そう思った私達の予想は外れ、
「。。。。」
「そうか。。。」と言ってそのまま黙ってしまった。
人が変わったように
翌日も
いつものように父は飲んで帰って来た。
「かあちゃん、帰って来たぞ〜」と物凄い笑顔で。
母はこの変容ぶりに戸惑い、ポカーンとして、
私と顔を見合わせ、何が起こっているのか解らず、しばらく放心状態。
それからもずっと、酔って帰ってきて
母をなじる事が(ほとんど)なくなった。
兄の一言で父は変わり、
母は「お兄ちゃんのお陰」そう言いながら、
「でも、なんか調子狂っちゃう」といって、みんなを笑わせた。
それからは父の帰宅とともに蜘蛛の子を散らす事もなくなり
「今日はどんな顔して帰って来ると思う?」 と話しながら、
玄関の扉が開くと、
「帰って来た!おかえりー」と言って迎えるようになった。
(後でこの出来事を兄に言ったら、
覚えていないって言っていたけど、溜まりに溜まってたまらず出た言葉だったんだと思う)
父の中にどんな変化が起こったのか
考えてみれば、
家族全員、父に怒られるのが怖くてずっと避けてきた。
思わず言った兄の本音に、
「そうか。。。」と言った父の気持ちはどんなものだったのか、
当時はそんなに真剣に考えた事がなかったけれど、
セラピストの大塚彩子さんのビリーフシステム勉強会に出ていた時に言われた言葉。
「お父さんはお兄さんの言葉で許されたんだね」
「?」
一瞬意味がわからなかったけど、
兄からの指摘、母をなじるな!飲むなら楽しんで帰って来いという言葉で、
酒を飲んで楽しんでもいいと、許されたんだと。
「許される」という表現が正しいかどうかはわからないけど、
みんながいい顔をしないのは、俺が飲んでくるのが気に入らないからだ。
好きな酒を飲んで何が悪い!
これが父の勝手な思い込みだった。
兄の一言で、誤解が解けて、
飲んで帰って来る事への、罪悪感(のようなもの)や、
体中から発していた攻撃性が消え、私達も構える必要がなくなった。
もう本当に、思い込みほど、無駄なエネルギーを使うものはない。
私達ももっと早く、何が嫌だったのか言えばよかった。
(当時はやっぱり怖くて言えなかったけど)
父はどうせ言ってもわかってくれない。
これが私達の思い込み。
噛み合わないお互いの思い込みのせいで、何年我慢したことか。。。
思い込むまえに、伝えること。
思い込みでもいいから、本当にそうなのか聞いてみる事。
そうすることで、いつも心を重くしていた問題は、案外小さい事に気づくかもしれない。