「この世界は、素晴らしすぎて気づかれない。人間の中で、生きているうちに人生を理解できる人はいるのかしら?」
ソーントン・ワイルダーの3幕物の戯曲『わが町』(わがまち、Our Town)に出てくるセリフだ。

世界各国でも翻訳され「地球上で上演されない夜はない」と言われた不朽の名作。
人々のありふれた日常生活、
朝のコーヒー、いつもの会話、雨、風、時計の音さえも
何も特別なことがない、いつもの「日常」という貴重さ、かけがえのないものの価値を問う。

自分、家族、人間、世界にとって、いったい何が大切なのか、その答えを、この世界を去って初めて気付いた主人公
「人生ってひどいものね。そのくせ素晴らしかったわ」と自分の人生の日常を振り返りながらつぶやく。
この短いセリフの中に、彼女の人生への想いが全て詰まっている。
生まれてからずっと、日常という時間を積み重ね、今私たちはここにいる。本当は、この毎日が特別なんだ。年齢を重ねたせいか、そんなことをしみじみ考えた2024年の夏休み。
